田中のくせに!!
ホッと息を吐いたあたしに追いついた瀬名晴人が、苦笑いしながら言う。
「まどかちゃんさ、言わないの?田中クンに、自分の気持ち」
「…なんで?」
「なんでって。
…まどかちゃん、辛そうな顔してるから。
言ったら変わることも、あるかもしれねーじゃん」
「……」
言ったら変わること。
…でも、田中の気持ちが他の人にあるのを知っているのに
それがいい方向に変わるなんて、到底思えなくて。
…もしあたしが言ってしまったら
もう二度と元には戻れなくなりそうで
「もう帰る」
「あ、じゃぁ送っ「いいよあたしの家このすぐ近所だから!じゃぁね!!」
瀬名晴人の方をチラリとも見ないで駆け出した。