田中のくせに!!
「…どしたの、お前…」
ソファで意気消沈しているあたしを、両手にマグカップを持った田中が怪訝そうに見下ろした。
「…これ紅茶。飲めば?」
「…ドーモ…」
ん、と頷いて、田中が隣のソファに腰かける。
…田中光(タナカヒカル)。
同じクラスの男子。
とはいっても特に、仲良くもなければ悪くもない。
「はぁ…」
あたしは、決してイケメンとはいえない田中の横顔を眺めて、思わずため息をついた。
「…お前な。人の顔見てため息つくなよ」
「いや…だっててっきり、イケメンだと思ってたから…あ」
うっかり本音を喋ってしまい、慌てて口を押えるがもう後の祭り。
「はぁ?」
田中が思いきり、顔をしかめた。
「何だよそれ」
「…い、いや…」
…田中は
決してイケメンではないけど、かといってブサメンでもない。
見た目は、普通。
頭も、普通。
性格も、普通。
クラスでも、特に目立つわけでも目立たないわけでもない。
友達が多いわけでも少ないわけでもない。
彼は、あたしの仲良しグループの中ではこっそり、こんなあだ名がついている。
Mr.平均値
クラス中の平均値を集めたような、そんな男子。