田中のくせに!!
チッチッチッ…
部屋に響く秒針の音が、ますますあたしの不安を煽る。
あれから、小林先生にあんなことになった理由を聞かれて
ただの傍観者だったあたしは、すぐに帰された。
だけど…当事者の田中はまだ帰ってこない。
しかも、理由がどうであれ、楢崎くんを殴ったのは田中だ。
…まさか停学、とか…ならないよね?
「…や、やめよ!考えるの!」
あたしが今あれこれ考えたって、どうにもならないし…。
気を紛らわすため、あたしはお風呂を洗って、お湯をわかす準備をする。
でも、やっぱり考えちゃう。
花凛ちゃんと楢崎くんの喧嘩は、楢崎くんの浮気が原因だった、ってことだよね…。
楢崎くん、何でバイトの先輩とキスしちゃったんだろう。
それに田中…
すごく怒ってた。
あんなに怒った田中を見たのは、初めてっていうくらい…
“花凛だけは傷つけんなよ!”
…なんだか胸が痛かった。
やっぱり花凛ちゃんは田中の特別なんだって、嫌ってくらい、思い知らされたから…。