田中のくせに!!
「別にって、まどかチャンさっきからそればっかだな」
「うるさいな…ていうかついてこないでよ」
「そんなこと言ったって、俺も教室こっちだし…あっ!」
「え?」
瀬名晴人につられて振り向く。
そこには廊下の隅で話す田中と、花凛ちゃんと…楢崎くんの姿。
あの3人が一緒にいるのを見るのは、あの時以来だ。
…こっちに背を向けてる田中の表情は見えないけれど、花凛ちゃんと楢崎くんは…この間よりも少し、表情が柔らかくなったような。
少しだけ、以前と同じような雰囲気を感じる。
…もしかして問題解決、した?
…まぁあたしには、関係ないことだけど…。
そんなことを色々考えている間に、じーっと見つめてしまっていたらしい。
花凛ちゃんがあたしの視線に気づいて、「あ」と口を動かすのが見えた。
それと同時に、田中がこっちを振り向く気配…
やばっ!
「ちょっとアンタ、ここに立って!」
「は、え!?」
ワケがわからない瀬名晴人を、無理やり盾にしてその陰に隠れる。
「……おい、何してんのおまえ」
「え~?それは俺が聞きたいかな~?♪」
低い声の田中と対峙した瀬名晴人が、いつも通りお気楽な声を出した。
「…周防」
「な、なに」
瀬名晴人に隠れたまま、とりあえず返事だけする。