田中のくせに!!
おわりと、はじまり。
「じゃぁまどか、パパとママ、もう下行ってるから。
あんたも早く来なさいよ?」
「はーい」
そして田中にお礼を言って、二人が部屋を出ていく音がする。
お父さんとお母さんがこないだ、長い長い旅行からようやく帰ってきて。
今日からまた、あたしは家族三人での暮らしに戻る。
「おい、早くしろよ」
ダイニングテーブルを触って、思い出に浸っているあたしに、田中が呆れたように声をかけた。
「いいじゃん、もうちょっと…なんだか離れがたいんだもん」
そんなあたしに、田中がため息をついて隣に並ぶ。
「…なんか、夢みたい。今思うと。
毎日けっこう、色んなことがあったよねぇ…」
「まー…そうだな」
「田中に裸を見られたり…田中にブラを見られたり…」
「おいやめろバカ!俺がただの変態みたいだろ!!」
顔を真っ赤にして激怒している田中は放っておいて
あたしは最後に、グルッと一周、部屋を見渡した。
「なんだかんだ、お世話になりました!」
「…別にこれで最後じゃないんだから、…別にいいだろ」
「え?」
さっきの名残か、まだ顔が若干赤い田中。
「だから…またいつでも、来ればいいじゃん。
おまえは…彼女なんだから」
「!!!!」
付き合い始めてから、田中はたまーに、サラッと…こういうことを言ってくるから困る。
「ほら、行くぞ!そろそろ」
呆けたように立ち尽くすあたしの手を、田中がちょっと乱暴にひいた。