田中のくせに!!
気持ちの行方。
「あー疲れたー」
家に帰ってきて早々、ソファにドカッと腰かける田中。
「疲れたねー、なんだかんだ歩いたし…
今日はもうお風呂入って早く寝ちゃおーっと」
入浴剤は何いれようかなー?なんて考えていると
「いや、周防は寝れないだろ。
英語のレポートやってないんだろ?」
……忘れてた。
「…お願い!手伝って田中!」
「やだ。眠いもん」
そして怠そうに立ち上がると、さっさと自分の部屋へ引き返して行こうとする薄情な田中。
「ケチ~!」
「ケチで結構。明日寝坊すんなよ?」
そしてちょっとあたしを振り向くと、ニッと笑った。
「…田中」
気付いたら、ドアの引き戸に手をかけた田中を呼び止めていて。
「ん?」
「…言わないの?花凛ちゃんに…」
好き、なんでしょ?
「…言ったって、どうにもなんないだろ?」
自嘲気味に、口角をあげる田中。
「…でも」
「いいんだよ。
言わない。
…言わない方がいいこともあんだよ」