田中のくせに!!
「あ、おかえり」
「…ただいま」
アパートに戻ると、田中がソファに座ってテレビを見ていた。
「どうだった?」
そしてニヤリと怪しげな笑み。
「った、楽しかったよ?」
「ふーん…彼氏できた?」
「彼氏!?
そ、それはまだだけど…あっでも、さっき電話で言った、三浦さんって人と結構いい感じになって。
家まで送ってもらっちゃったし」
「へー…」
フッと笑って、興味なさそうにテレビに視線をうつす田中。自分から聞いてきたクセに。
「意外とうまく出来たんだ?」
「ま、まーねっ。
あたしだってその気になれば、ちょちょいのチョイだって!彼氏の一人や二人…」
「…ふーん?」
チラッとあたしを見て、微かに口角をあげる田中。
「…なんかバカにしてる?」
「別に?」
「いやしてるでしょ、絶対!」
「だからしてねーって。
じゃ、俺もう寝るわ」
田中はリモコンでテレビの電源を切ると、サッサと立ち上がって自分の部屋へ行ってしまった。
…あの、見下したような笑み。
ぜーったい、あたしなんかに彼氏無理だって思ってるんだ。
…ふん…いーよ、こうなったら見せてやろうじゃん
見てろよ田中!!
あたしは静かになったリビングで、一人、そう誓った。