曖昧な温もり
中庭を通り学部内へ入ろうとした私の目の前に葛城と見知らぬ女子がいた。
どうせいつもの如く誘われているのだろう。面倒くさそうなので私は回れ右をして迂回を決めたのに。
「おい!ちょっと待て」
後方から響いたのは葛城の声。仕方なく後ろを振り返れば足早にこちらに向かって歩いてくるじゃないか。
とっさに嫌な予感がして逃げようと試みた瞬間、すでに腕は捕まれていた。
葛城の顔を睨めばニヤっと含み笑いをしている。まずい。長年の付き合いからこの顔をしているときは何か企んでいる証拠だ。
「悪いな。今日はこの女と先約なんだ」
私の肩に腕を回し葛城がその彼女に説明をし始めた。私が反論出来ぬよう肩にかけられた手には物凄い力が加わっている。
ったく、この自己中男め!
しかしなかなか引き下がらないその彼女にとうとう葛城は爆弾を投下した。
「しつこいブスは嫌いなんだよ」
あぁ…神様お願いします。この男の口を止めてください。
怒り心頭の彼女は葛城に捨て台詞を吐き去っていくが、見知らぬ女子に最後は睨まれた私。穏やかな大学生活が見事に崩れ落ちた瞬間だった。