曖昧な温もり
「アンタねー!「てことで、今日は飲みに行くぞ。もう決まりだ」
葛城の一言で私の反論は脆くも崩れ去った。葛城は一度言い出したら人の言うことを聞く男じゃないのを忘れてた。
講義を終えてからあの日と同じ居酒屋で飲み始める。ついあの夜のことを思い出してしまいなんだか居心地が悪い。
しかし当の葛城は淡々と飲み物や食べ物を注文していく。今時の男は草食系で優柔不断な男が多い中、葛城は違うなと思いその様子をジッと見ていた。
「そんなに見つめると食っちまうぞ」
「はぁ?」
この男。学食ではあんな事を言い出すし今だってこの通りだ。ただ単に私をからかって楽しんでるとしか思えない。
「ねぇ、一体どういうつもり?」
「なにが」
運ばれてきた唐揚げを口にしながら上目遣いで私を見る。私は負けじと葛城を睨み返した。すると、ニヤっと笑うではないか。