曖昧な温もり
「もう一度、俺に抱かれてみれば分かると思うぜ」
「だ.か.ら、そういう事をここで言うな!」
私の大きな声に周りの客が驚き視線が集まる。それが恥ずかしくて俯くしかなかった。
「お前、ホント面白れーよな」
あぁ。やっぱコイツは私で遊んでるだけだ。もうこっちが気にするだけ無駄なのかも。
気が張っていた分、それが無くなった時の反動が大きい。私は知らぬ間に酒のペースが早まっていた。
それに気づいたのは途中トイレに立った時の事。ヤバイ。帰った方がいいかも…。
「私、先帰るわ」
「は?」
まだ何か言い足りないような葛城を無視して鞄を持ち出口へ向かうが、酔いのせいでふらつき倒れそうになった体を葛城が支えてくれた。
その逞しい胸板と腕が心地よく思えた私はかなり酔っていたと思う。