ペイン
 リンはツカサとは違いストレートに文面を書かなかった。というか書けなかった、と表現した方がいいかもしれない。気恥ずかしさもあり、誰かに成りきろうとする罪悪感があったからだ。しかし、言葉を捻り、消し、結合させる内に、楽しさと真剣味を帯びた。ツカサのような秀才であれば言葉の裏を読み取ってくれることを期待した。ツカサがストレートに表現するならばリンは曖昧さで攻めた。それにマイという人物は宝条家当主の娘であり、格式の高いお家柄だ。これぐらいの文は生み出せるだろう、という憶測もある。
 リンはツカサの靴箱にラブレターを四つ折りにし丁寧に置いて蓋を閉めた。

 三日後だった。
 屋上にいたリンの元にツカサからの手紙が届いた。なぜマイ先輩の下駄箱に入れないのだろう。返信を書いて終わりだと思った。そして、この間と同じように飛んできた右翼棟を見た。やはり、誰もいなかった。
 リンは紙ヒコーキを開いた。
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