よみがえれ誠の魂よ〜天つ風は何処(いずこ)へ〜
それから暫くして、
私は一人で外出していた。
それから間もなく、
異常な程の胸騒ぎがした。
だから慌てて家に飛ぶようにして帰ると。
────父上が、爽に斬りかかっていた。
父上の持つ刀は、沖田総司が使っていた
有名な『菊一文字』だった。
対する爽は、爽が生まれた時に作られた
刀、『妖刀 爽凜斬(ヨウトウ ソウリンザン)』で
何とか受け止め、堪えていた。
『父上、何をしている!!!!』
迷わず私は己の刀、
『妖刀 紅椿(ヨウトウ ベニツバキ)』を抜き、
父上の刀を跳ね返した。
父「ちっ。お前は沖田総司の再来なんだ。
そこの餓鬼は邪魔者なんだよ。
沖田総司の再来以外必要ないんだ。
だからお前は退けろ。
そこの餓鬼を始末させやがれ!!」
『爽は私の弟だ!!
手を出すなと言った筈だ!!!!』
そうこう言っているうちに。
───────グサッ。
と、人の刺される音と、
爽「うっ………………………」
爽の呻く声が聞こえた────
『そ、んな……………っっ!!??
そ、…………爽…………………っっ!!!!』
ガッと父上の刀をはじき飛ばし、
爽に駆け寄る。
刺したのは父母の一番弟子、暁(アカツキ)だった。
爽「つば、き、ねぇ、ちゃ…………。」
どんどんと爽の息が荒くなる。
直ぐに悟った。
─────爽はもう、長くない、と………。
爽「椿、姉ちゃん…………。
僕は、椿、ねえちゃ…と……居れて………
良か……………た……………。
僕…………もっと………一緒……居た……かった。
だか………ら、爽……凜斬………持って……て。
椿、ねえちゃ…んと…………居れて……………
僕、は……………幸せ………………だっ……た…………」
震える手で私に爽凜斬を渡し、
最後にそう言うと、爽は息を引き取った。
『そ、う…………………………??
嘘……………なんで………………………
うわあぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』
発狂し、気付いた頃には手に持つ紅椿に
違和感を感じた。
グニャリとした、肉の斬れた感触………。
紅椿に付いた赤黒い液体。
嗚呼、これは父母達の血か。
私は無意識で父母を斬り殺していた。
『フフフ………………
なぁんだ……………人は………脆いんだ…………。
ねぇ…………………爽を返して………??
何で私から爽を奪うの??』
私は狂った。
元々溜まっていた異常な量のストレスに
爽を殺された怒りが追加され、
我を失ってしまった。
こうして、気付けば周りは血の海。
父母、爽、弟子達の血だった。
暁だけ居ないのは気付いていたが、
それどころではない。
そのまま私は爽を抱き、
翌日まで泣き続けた……………。