よみがえれ誠の魂よ〜天つ風は何処(いずこ)へ〜
【紫苑 過去】
俺は土方家に、土方歳三の子孫と
して生まれた。
物心ついた頃には、
いつも周りには女が居た。
親父や兄弟、従兄弟や親戚。
土方家の男共は皆揃って女好きだった。
皆は口を揃え、こう言った。
『土方歳三の子孫たるもの、女好きなのは
当たり前の事なんだ』
と。────────
最初は俺も、土方歳三の子孫なら
そうなんだって思えていた。
だが、成長するにつれて、
その考えは可笑しいんじゃないかと
思う様になった。
土方歳三の子孫だから?
子孫だから女好きまで真似しなきゃ
いけないのかって。
それに、俺達の周りにくる女共は誰も
かれも同じ様な奴ばかりだった。
土方歳三の血筋。
無駄に顔の良い男達を求める。
それらを求める女共は皆顔を少しでも
綺麗に見せようと、ケバい化粧をしたり、
無駄に臭い香水なんざを振りかけて、
自分を着飾っていた。
俺にはどうしてもそれが無理だった。
だから、俺だけは女を一切
近付けようとしなかった。
近付いて来ようとする奴は
睨み等で遠ざけた。
それでも近付こうとする者は、
俺の得意の剣道で、近づけない様にした。
そのおかげで、暫くは女共が
近付いて来ることはなかった。
そして、俺、紫苑15歳。
────俺を、徹底的に女嫌いに
する事件が起きた。