好きって気づけよ。

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栗原くんは、帰りのホームルームがはじまっても帰ってこなかった。



家に帰ったのかなぁ。

そんなことを思いながら、担任の先生が前で話をしているのを見ていると。




「ああ、そうだ。佐伯は帰る前に、保健室に栗原のようすを見に行ってやってくれないか」




話を切り上げようとした先生が、思い出したように私を見た。


ぼーっとしていたに近かった私は、思わず「へ?」とまぬけな声がこぼれる。




「となりの席だしな。渡さないといけないプリントもあるし、たのむよ」


「えーっ、心愛ずるい!」


「あたしが行きたいー!」




女の子たちが次々と声を上げて、栗原くんはやっぱり人気だなぁと思った。


ちょっと変わってるけど……いい人にはまちがいないよね。



 
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