好きって気づけよ。
「なっ。どうして返してくれないの?」
「なんとなく。つーか、今日のお前の鞄なに入ってんの」
「え? ……あ、辞書が入ってるよ。課題で使うから、持って帰らなくちゃいけなくて」
「ふーん」
適当にあいづちした凪くんは、私に鞄を返すそぶりも見せない。
少しの間だまった私は、その理由に気がついた。
理解力のない私だって、凪くんのことはわかるよ。
だってずっといっしょにいた幼なじみなんだもん。
「ふふっ。やっぱり凪くんは優しいねっ」
意地悪で返してくれないわけじゃなくて、
辞書が入ってて鞄が重いから、わざわざ持ってくれているんだね。