好きって気づけよ。




私が笑顔でお礼を言うと、栗原くんも笑ってくれると思ってた。

栗原くんって、いつも明るい笑顔の男の子っていうイメージが強いから。



だけど栗原くんが見せたのは、あの悲しい表情だった。



あれ……?




「心愛ちゃん」




ぱく、とクッキーを食べた栗原くんが、落ち着いた声で私の名前を呼んだ。




「ああいうの。前からされてた?」


「ああいうの?」


「……女の先輩から呼び出されて、好き勝手に罵倒されるの」




栗原くんは今度ははっきりと、直接的な表現で言い直した。


真剣な色をした瞳に垣間見えるのは、あのときも見た悲哀。



 
< 182 / 356 >

この作品をシェア

pagetop