好きって気づけよ。




「お姫さまをすくったのは、1番そばでお姫さまを想っていた幼なじみじゃなくて、お姫さまが想っていた王子さまでした~。っていうお話。
ど? おもしろかった?」




私を見て、にこにこと笑ってみせる栗原くん。


そして持っていた袋からまたクッキーを1枚とりだして、口の中にほうりこむ。




「これ、すげーうまいね。わざわざつくってくれてありがとね、心愛ちゃん」


「栗原くん……」


「あ、同情とかいいよ? 俺も強くない男だったし、ソラからしたら役に立たない最悪な幼なじみだよね。
ま、ソラはいまもそいつと仲良くやってると思うし。もう心配もないだろうから、安心してるんだけどさ」




なんて言えばいいのか、わからない。


下手なことを言って傷つけてしまうくらいなら、なにも言うべきでないのかもしれない。



だけど、つらいのに無理して笑う栗原くんは、見たくないよ……。



 
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