好きって気づけよ。
「……ああ、そうだ。心愛ちゃん。いいこと教えてあげよっか」
「へ? なに?」
ちょいちょいと栗原くんに手招きされて、私はそばに歩み寄る。
すると、こそっと耳打ちされた。
「きみの幼なじみの坂野くんにもね、“好きな女の子”がいるんだよ」
「え……?」
「きっとその子が坂野くんにとっての初恋なんだろうねぇ。何年も片想いしてるんだと思うよ」
栗原くんは人差し指を口元にあてて、「本人に聞いちゃだめだよ」と笑う。
私はそれにうなずくこともできず、ただ、ぽかんと放心した。
だって……
あの凪くんにも、好きな女の子が……?
そんなことは考えたこともなかった私は、おどろきを隠すことができなかった。
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