好きって気づけよ。




心愛の腕をつかんでいた手をはなすと、ほっとしたような、とまどったような表情を向けられる。


……もやもやするな。



今朝いっしょに登校したときはふつうだったと思うから、きっとそのあとでなにかあったんだろう。



すぐに頭に浮かんできたのは、栗原の顔。

あいつのしわざかもしれない。


やっぱりあんなやつに、容易に心愛を近づかせるべきじゃなかったかも……。




「じゃあな」




心愛と教科書を交換して、俺はいろいろと考えながら教室にもどった。




“つかまえられないうちに、逃げられても知らないわよ”



このときはまさか、本当に“心愛が俺から逃げる”ことになるなんて、思ってもみなかったけれど。




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