好きって気づけよ。




心愛のふるえる声が、だんだんとフェードアウトしていく。


怒ってるけど、それ以上に悲しそうな声。



頭を優しくなでて「ごめん」ともう1度謝ると、心愛は俺のジャケットをぎゅっと強くにぎった。


そしてまた、おずおずと俺を見上げて。




「も、もう……ほかの女の子とふたりになっちゃやだよ……っ」




涙でうるんだ瞳が、俺だけを映し出す。

心愛が遠慮気味に口にしたのは、小さな独占欲のしるし。



ほんと、なんでこんなにかわいいんだよ、こいつ……。




「わかった。……じゃあ、俺からもひとつ」


「へ……?」


「そういう表情見せんのは、俺だけにしろよ」




涙目の心愛にほほ笑んだ俺は、さっきよりも少し強く、心愛をぎゅっと抱きしめた。




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