情熱のラブ・  フォルテシモ
控え室に戻るとジョシュから贈られた花束の横にCDが置いてあった。

私は手に取ってジョシュのアルバムジャケットを撫でた。

きっとマネージャーが持ってきてくれたんだわ。

私はジョシュのオファーを受けても必ずここへ帰ってこようと心に決めた。

私の居場所はここだけ。

田原マネージャーのいるこのクラブだけ。

ジョシュとのことは出張、もしくは旅の一つだと思いたかった。

私の心の中にはいつも田原隆一がいるわ。

週明けの午後早い時間にマネージャーが迎えに来た。

私はラフなニットアンサンブルの上にジャケットをはおり

明るい色のミュ-ルを履いた。

「ジュナ、何をどう決めたかは知らないが、不安はなくなったのか?」

「はい、私はどこへ行こうと必ずクラブへ戻りたいのです。そう考えました。」

「いい結論が出たな。俺の期待通りで申し分ない。君を手離したくないと思っているから、必ず戻るとわかっていれば待っている甲斐がある。」

「ありがとうございます。」

私は彼の言葉に安心できた。私は間違ってない。

自宅でジョシュのアルバムを聴いた時、自然に涙が流れた。

世界中の人々の心を動かす彼の声に震えた。

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