情熱のラブ・  フォルテシモ
私には田原マネージャーの支えが必要だった。

いつも彼がついていてくれる今の環境に慣れていたので

彼無しでよそへは行けないと思った。

例えそれが期限付きでも。

「俺はここから動けない。君は一人で行くんだ。」

彼は私の今の気持ちを知っていた。

だからそう言うのだとわかっていた。

「ミスター・ライアンがそばにいるだろう。彼になら何でも相談できると思う。」

「・・・・・」

それでも私は不安だった。

「時間だ。ステージの最後に一曲頼むぞ。それから他のシンガーの耳にもいずれ入ると思うが、君は君の思う道を進むんだ。ここならいつでも帰ってきていい。君だから許せる。」

彼の目が優しげに見えた。私は余計戸惑った。

そして何か大切なことを見逃しているように思えた。

彼はジョシュ・ブラウを知っていた。

一体どんな声で歌うのかしら?

「ステージに戻ります。」

「ああ、頼む。」

A席は空だった。

ジョシュは帰った。

彼の歌声を聴いてみたいと思った。

今夜の最後を締めくくりステージを終えた。

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