泣き星


「……星羅は、何を願いたいんだ?」


 ……きっと、星羅の願い事は、星に願うようなものじゃない。
 それは星空を見つめる真剣な眼差しを見ていたら分かる。

 星羅はゆっくりと視線を俺に向けた。瞳の中で雫が、今にも零れてしまいそうになりながら揺れていた。


「――冬夜がわたしと別れて、幸せになっていけますように」

「……っ! おまえ……何、冗談言って……」

「本気だよ。わたしの願いは、それ一つだもん」


 温かい雫が一つ、星羅のぬくもりを失った俺の手の甲に落ちた。ポタポタと、次第に早さを増して乾燥した手を潤していく。

 それは、星羅の涙だったのだろうか。
 ……いや、もしかすると本当は、俺のものだったかもしれない。

 星羅の願いに胸が締め付けられて、気が付いたら星羅の身体をぎゅっと強く抱きしめていた。普段なら絶対に痛いと言われてしまうような力で。


「とう、や……」

「……なん、で。何でだよ、星羅。別れる必要なんて、ねえはずだろ……?」


 星羅の身体を包み込む腕が小刻みに震えた。

 俺はどうして星羅に、こんなことを言わせてしまっているんだろう……。

 悔しさともどかしさがごちゃごちゃになって胸が痛い。冷気が頬に当たる冷たさで、自分が泣いていることに気付いた。
 星羅のマフラーに、俺の情けない涙が染み込んでいく。

 震える俺の背中を、星羅は腕を精一杯伸ばして包み込んだ。


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