泣き星
俺の腕を掴んでいた星羅の手が、するすると力を失って滑り落ちていく。最後に行き着いた俺の手のひらを、遠慮がちに握られた。
「だって……。わたし、絶対にたくさんのことを冬夜に求めてしまう気がするの。簡単には会えないことを分かってるくせに、きっとわがままばかり言ってしまう。それが嫌なの。余計なことで冬夜の重荷になってしまうぐらいなら、今、別れた方が良いって。そう、思うんだけど……」
ポロポロ……と、瞳から落とすことを我慢していた大粒の涙が、星羅の瞬きに合わせて落下する。
星羅はミトンの手袋を外すと、乱暴に目元を拭った。
その仕草が瞼を傷付けてしまいそうで、心配になって自分の指でなぞるように優しく涙を掬ってやった。
すると星羅は余計に雫を落とし始める。仕舞いには表情を幼児みたいにくちゃくちゃと歪めて、今にも消えてしまいそうな儚くか細い声で言った。
「……わたし、本当は、別れたくないよ……!」
今日初めて見る泣き顔で伝えられる、星羅の本音。
何かを吹っ切ったように躊躇われることなく落とされる涙に、俺はやっとのことで気付かされる。
……ああ、そうか。
いつも見せてくれる笑顔にばかり引きつけられて、俺は大切なことを見失っていたのかもしれない。