泣き星
星羅が俺に見せないようにしていた泣き顔には、我慢した感情が溜め込まれていたんだ。
わがままを言えばきっと困る。遠距離で付き合っていけば、自分の存在が邪魔になってしまう。
今まで俺にあまり甘えてこなかった星羅のことを考えると、そう思って悩んでいたことは簡単に想像できた。
でもそうやって想像は出来るくせに、今まで星羅の気持ちに気付けなかった。そんな自分が嫌でしょうがない。
最終的には“別れる”という決意までさせてしまったことが悔しくて、俺はぎゅっと唇を痛いぐらい噛み締めた。
「……俺も別れたくない。二人の気持ちが同じなら、もう別れる必要なんてないよな?」
涙と冷気ですっかり冷え込んでしまっている星羅の頬を両手で包み込んで、必死に温めようとする。
星羅はそれから逃げようとはしなかったけど、瞳はまだ不安げに揺れながら俺を捕らえていた。
その仕草で、星羅の中でまだ何かが引っ掛かっていることはすぐに分かる。
「でも、わたし……」
「わがままなら、いくらでも言っていい。むしろ星羅は、もっと俺に甘えていいんだ。星羅が会いたいっていうなら、俺はすぐにでもこの町に帰ってくる。別にそれが重荷になるわけでもねえよ。俺だって星羅に会いたいって思うから、会いに来るんだからな」
この町を出ていくと決めたとき、星羅のことを考えなかったわけじゃない。離れたら寂しいのは星羅だけじゃない。俺だって同じなんだ。
だから会いたいって星羅が思うように、俺も会いたいって思う。
それはとても自然なことで、そのために行動するのは全然苦じゃないんだ。