泣き星
「俺は星羅の笑った顔が好きだけど、何かを我慢して笑ってるぐらいなら無理して欲しくない。気に入らないことがあるなら怒ってその理由を教えて欲しいし、辛いことがあるなら泣いて訴えて欲しい。言いたいことを言えないまま付き合ってる方が、ずっと苦しいだろう? だからこれからはちゃんと、伝えたいことは言おう。それがお互いのためになるから」
伝えたいことを遠慮して言葉にしない。
それは星羅にも当てはまることだし、自分にも当てはまることだった。
好きだから、許せることもある。
でもそれは同時に自分の気持ちを押し殺してしまっているわけで、あまりにもそればかりを繰り返してしまっていると、いつしか心が支えきれなくなってしまう。
だから、ときにはわがままを言い合うことだって、大事なんだ。
何も言わないことだけが相手のことを考えているとは限らない。
伝えることだって、相手のことを思う大切な関わり方だから……。
星羅は俺の言葉に何度も頷きながら、胸の中に落としているみたいだった。そしてずっと固く結ばれていた唇を開く。
「……ありがとう、冬夜。そう言ってもらえて、すごく気持ちが軽くなった」
目尻にはまだ水滴が残っているけれど、星羅の顔にはもう悲しみは存在しなかった。
星羅は腫れてしまった瞼を恥ずかしそうに撫でている。そこにあるのは照れ笑いだった。