泣き星


「あ、ちゃんと来てくれたんだ……」


 待ち合わせの時刻を15分ほど過ぎたところで現れた星羅の第一声がそれだった。

 驚いているような、喜んでいるような。そんな感情が混ざり合って、星羅の瞳が丸く見開かれている。

 呆れる俺とは対照に、星羅はみるみるうちに笑顔になった。

 微かに開いた口から、白くなった吐息が吐き出される。


「おまえな……。人をこんな時間に呼び出しといて、しかも俺を待たせておいて、最初に言うのがそれかよ?」

「えー、だって本当に来るとは思わなかったんだもん。“マジで集合すんの?”ってラインも来てたし」

「おまえがそれを無視したままにするから、俺は来るしかねえだろ。……つうか、呼び出した理由は何?」

「あ、それね。時間ないから歩きながら説明するよ。とにかくついてきて」


 星羅はそう言うや否や、そそくさと公園の中に入っていく。
 俺が背後で立ち止まったまま「は?」と言うと、星羅はすぐさま振り返った。


「ほらっ、冬夜(トウヤ)も早く来て! 間に合わなくなっちゃうかもしれないじゃん」


 一体、何に間に合わなくなるっていうんだよ。そもそも遅刻したのは星羅じゃん。

 そう思うのに尋ねる暇さえ与えてもらえない。だって星羅が、俺の手を握って歩き出すから。

 真っ赤なミトンに包まれた星羅の小さな手が、ぎゅっと俺の冷えた手を掴む。


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