泣き星
「冬夜に良いもの見せてあげる」
チカチカと点滅を繰り返す蛍光灯の光の下でも、星羅がゆっくりと笑ったのがはっきりと見えた。
俺の心はそれに、いとも簡単に掴まれてしまう。身体はとっくに冷え切っていたはずなのに、自分でも触れられない奥の方からじわじわと熱が込み上げてきた。
……ほんと、惚れた弱みなのかもな。
星羅の笑顔にはいつも敵わない。星羅に惹かれた理由も、この綺麗に笑う笑顔だったぐらいだ。
思えば俺が知っている星羅は、いつだって笑っている姿ばかりかもしれない。
泣かせるようなことをしていないからだと思うけど、泣き顔とかは見たことない気がする。
今まで特に、そのことを意識したことはなかったけど……。
星羅は俺の手を引いたまま、早足で歩いた。二人の足が向かうのは、公園の上にある高台。
どうやら星羅が言う“良いもの”はそこに行けば見られるらしいと、繋いだ手に力を込めながら説明してくれた。
薄暗い街灯の光だけを頼りに、木材と土で固められた少し不安定な階段を上る。
段の高さがまばらで明らかに手作りですって感じの階段を進むたびに、だんだん不安が募ってきた。
この公園の高台には何度か行ったことあるけど、そんな大したものなんてあったけ……。
良いもの。見られるもの。
その頼りないヒントをもとに色々と考えるけど、星羅が何を目指しているのかいまいちよく分からない。