泣き星
「……なあ、良いものって何だよ?」
「それは着いてからのお楽しみー」
気になって聞いてみても、そうはぐらかされてしまう。
星羅の笑顔につられてあっさりとついてきた自分に今さら後悔して、気付かれないようにこっそりと溜め息をついた。
階段を上って公園と高台を繋ぐ林の間を抜ける。そうすると静けさに纏われている少し広がった場所に着いた。
公園もここまでの道のりも薄暗かったけど、ここはもっと暗いというかほぼ真っ暗だ。
何せ、唯一一本だけある街灯が点いていない。銀色の棒が立っているのは、暗闇の中でも辛うじて確認出来るけども。
ちくしょう。蛍光灯切れてんのかよ。
辺りは真っ暗すぎて、目が慣れるまでに時間がかかる。
そのせいで身動きが取りづらいったらありゃしねえ。
星羅の目的が分からなくてもともと気分が下がってきていたというのに、動きにくいもどかしさが余計に気を重たくさせた。
おまけにしんとして張り詰めた空気が、より冷たさを強調させている。
冷気が頬を刺した。実際は刺すっていうか平手打ちされてるみたいな刺激だけど。
マフラーに顔を埋めると、ちょうど星羅が振り返った。
長い黒髪がサラリと揺れて、甘いシャンプーの匂いが鼻腔をくすぐる。
「こっちだよ、冬夜」
すぐ側で見る星羅の顔だけは、意外とはっきりと見ることが出来た。
星羅は優しく微笑むと、手を引いて俺を案内した。
俺は引かれるままに歩みを進める。