泣き星
歩く度に霜で湿った土とスニーカーが擦れた。
ジャリ、ジャリと。二人の轍を音が知らせる。
星羅は高台の柵のところに立つと、ようやく足を止めた。
「そろそろ見られるかな、良いもの」
星羅は高台から町を見下ろし、そして遠くを見ながらそう言った。
俺も倣って、自分が居る場所よりも遥かに下にあるみたいに思える町並みを眺める。
そんなに大都会とかではないけど、密集した住宅の明かりはこうやって見下ろすと結構な数に見えた。
家族の数。人が集う場所の数。あの光の数は、それらが作り出す温かくて優しいものの数だ。
身体を少し乗り出すと、町の向こうに広がる海から潮の香りが運ばれてきた。ヒュウッと、冷たい風が頬を撫でていく。
――と、その瞬間。
「あっ! 見えた!」
空から海に向かって、一筋の光が落ちた。
俺と同じようにそれを視界に捕らえた星羅の甲高い声が、鼓膜を刺激して少し痛い。
「ねえ、冬夜! さっきのちゃんと見たっ!?」
興奮した様子の星羅にダッフルコートの袖を勢いよく引っ張られる。
軽く揺すってくる星羅に目を向けずに海と夜空の間を一直線に見つめていると、また光の筋が見えた。
今度は二本が立て続けにスゥー……と、星空を駆け抜けていった。
その瞬間にやっと、光の筋の正体に思考が辿り着く。
「なあ、もしかしてあれって……」
――流れ星だよ。
俺の声に星羅の声が重なる。
星羅は俺を見てとても優しく、そして嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。