隣の部屋のナポレオンー学生・春verー
じゅわじゅわと音を立てるフライパンにか、そこから立ち上る匂いに反応したのか、鋼太郎がねだるようにあたしにすり寄ってくる。
これはねぎもいれるので、犬の鋼太郎似たには与えられない。
炒めたそれを皿に盛り付け、あたしはテーブルに移動させる。
棚の下のほうに収納してあるドッグフードを鋼太郎の餌入れに入れてやると、鋼太郎はもそもそとそれにがっついた。
では、あたしも夕飯としますか。
箸を手に胡座をかき、あたしは夕飯を口に運びはじめた。
今日は昨日の“ケータイ小説の朗読”は聞こえてこない。
あれを耳にした時の驚愕は、今でも忘れはしない。
夕飯をさらえて、あたしは食器を洗ってからお風呂に入り、それからは鋼太郎とじゃれていた。
「あ、鋼太郎。
また目やに出てるじゃん」
あたしはティッシュをとって、鋼太郎の目尻を軽く拭いてやる。
まったく鋼太郎よ、君たち犬はなんでそんなに可愛らしいのかね?
もし犬に言葉が通じるなら、あたしはそうやって問いかけてやりたい。
そうやって、床に寝そべって鋼太郎の顎を撫でていた、その時。
ぴんぽん、とインターホンが鳴った。