隣の部屋のナポレオンー学生・春verー
「うん、たしかにあたしの」
「ならば良かった。
すまんな、我が輩も放課後にはすぐバイトに行っておったから、返すに返せなかった」
「えっ?……バイトしてるの?」
「我が輩をなめるな。
これでも高校生の頃には、既にバイトをはじめておるわ」
ナポレオンが勝ち誇って胸を張る。
言っちゃ悪いけど……こんな性格で?
こんな喋り方で?
馴染めたの?
あたしはいまいち信じがたい。
しかしよくよく考えれば、彼は生きていた頃、位の高い貴族とも話す機会は多かったろうし、社交辞令など慣れたものなのかもしれない。
いちおう、軍や国を引っ張ってきた、みたいなこと言われてた人だしね……。
「ーーごめん、ちょっと見くびってた。
ファイルありがとう」
あたしは心底からの言葉をおくる。
ナポレオンは平然とした表情だったが、その後すぐに浮かれた顔になった。
「オレンジの礼だ。
……“コルシカの鬼”と蔑まれた我が輩も、大した男になったものよ」
照れ臭くなるどころか、感謝されてあからさまに喜んでいる。
異邦人を彷彿とさせる、印象的でクールな容姿に反して、ナポレオンは見るからに子供な性格だ。