隣の部屋のナポレオンー学生・春verー



「まあ、当てはまってるかも」

「ふ、我が輩の勘は衰えておらんな。
ではやはり、そいつも女遊びが激しくて性格が悪いのか?」

「いや、それはないでしょ」


いくらなんでも、それはケータイ小説に限っての話。

三拍子も揃った男の人が、全て性悪男とは限らない。

実際に、あたしは陸先輩の噂で悪い噂は聞いたことがない。


「それはない、という証拠はあるのか?
よもや勘とは言うまいな」

「あんただってよく勘で答えるじゃない」

「我が輩は才覚としての勘だ。
緋奈子のような思い込みの勘ではないぞ」

「自分で自分のこと才覚って……。
普通、いう?」

「我が輩なら自信を持って言えるな」


ナポレオンは鼻を高くする。

そうだ。

体は日仏ハーフといえど、こいつの心はイタリア生まれのフランス人・ナポレオンだ。

謙虚さなどなく、自分の自慢できることは包み隠さず自慢できる。


「……たぶんアレは、性格悪いぞ」


空虚な表情で、ナポレオンは言った。

その視線の先ーーー窓の外には、芝生で屯している人たちがいた。

その中には陸先輩もいる。


「あ、陸先輩」

「さっそく食いついたな」


ナポレオンが感情のこもらない目であたしを見てくる。





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