冷淡なキミの二番目彼女。


 「待って、」

 グイッと腕を掴まれる。ただそれだけで、こんなにも胸が苦しくなるなんて。どんだけ恭のこと好きなの、私。

 「…送る。」

 もっと嬉しそうに、優しそうに言ってくれたっていいのに。なんて思いながらも、腕を掴んでくれたことが嬉しかった。


 「ねぇ、恭からキスしてよ。」

 ふざけたように、言ってみる。まぁ、答えなんて分かっているんだけど、


 「ムリ。」

 付き合う時に、恭からキスはしないって言われていたから、断られるなんて分かっていたんだけど。ーーーやっぱりちょっと切ない。


 「俺は一番好きな奴にしかキスしないの。」

 そう言って、私の腕を掴んで、スタスタと歩き出す。優しくてもやっぱり冷たくて。気まぐれな猫みたい。


 「ーーしたいなら、愛理からすれば。」

 それなのに、帰り道だからなのか分からないけど、いつもの無表情がやけに可愛く見えた。


 「恭、屈んでよ。」

 キスして、なんてお願いは絶対にきかないくせに、屈んでって言えば素直に屈んでくれる。


 「楽しかったよ。」

 そう言って優しくキスしてーーーなにも無かったように歩き出す。



 「…俺も、」

 私がキスしたあとに、恭が何か言ったような気がしたけど、よく聞き取れなかった。



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