冷淡なキミの二番目彼女。
「何してんの。」
冷めた目で私を見る恭。怒りがピリピリと伝わってくる。
「キス、だよ。」
予想していたとはいえ、怒っている様子の恭にちょっと戸惑いながらも、そう言った瞬間。それまで無表情だった恭の表情が、険しくなり。真っ黒だった恭の瞳が揺れて、
ーーーガタンッ
恭は私の顎をガッチリ押さえつけて、これまでに無いくらい怒りを露わにして、
「あんまふざけたことばっかしてるとーーー殺すよ?」
低い声でそう言って、グッと手に力を込めた。
殺す殺すって、物騒な。しかも、かなり苦しいし。本当に私、死んじゃうのかな。なんて思いながらも、不思議と恐怖は無かった。
恭は無表情だけど、どこか悲しそうな顔で私を見る。どんだけキス大事にしてたの。なんて、呑気なことを考えていられるのも今のうちなんだろう。
「…綾音、」
ぽつりと、恭が呟く知らない女の子の名前。そしてハッとした顔をしてゆっくり私の首もとから手を離す。
呟いた後の恭の表情が、さっきの悲しそうな表情とは比べものにならないくらい泣きそうで壊れちゃいそうな表情だったから。恐怖より、興味が沸いてしまったんだ。
もっと恭を知りたい。同じ学科で、いつも無表情な彼しか見たことが無かった私にとっては、怒っているの表情も泣きそうな表情も、新鮮で仕方なかった。
「恭、付き合おうよ。」
自分でも、わからない。数分前に自分の首を絞めていた相手に、まだこんな気持ちを抱いているなんて。
それでも私は、恭と恋したかった。