冷淡なキミの二番目彼女。
「条件?」
首を傾げて恭を見る。ゆっくり恭が口を開く。
「俺は、好きとか言わないから。」
そりゃあ、一番の【綾音】さんが居るもんね、仕方ない。
「俺からキスもしないし。」
え?待って。俺からってことは、
「私からはいいの?」
さっき、すごい剣幕で私の首絞めたのに。それなのに、もういいの?…変なの。
「いいんじゃない?もう首絞めないし。」
そう言って、私の首を優しく撫でる。女の子みたいにさらさらな手に撫でられてキュンキュンしてしまう。
「それから、俺、立花が思っている以上に性格悪いから。すぐ分かるだろうけど。」
変なカミングアウト。別に恭が優しくて好きなわけじゃないのに。
「あと、最後にーー俺は立花を好きにならないよ。」
耐えられる?と聞いてくる恭。
耐えられるも何も、条件と言うからもっとキツイものを想像していたら、なんとも易しい条件で。断ることなく、笑顔で承諾した。
「恭は、笑わないよね。」
「…楽しくないから。」
こういう、冷たいところが、なんか好き。
「恭、大好き。」
「変わってるね、…愛理は。」
そう言って薄く笑う恭。初めて見る、恭の笑った顔。それに、
「…名前!!」
「勘違いしないでくれる?ただの気まぐれだから。」
照れ隠しでもなんでもない、無表情なキミの言葉が本音。それでも、笑った顔も名前呼びも嬉しいことに変わりはなくて。
「恭弥、キスしていい?」
そう言って背伸びをした私は、恭の返事も聞かずに唇を重ねた。嫌がることも、受け入れることもしない恭。恭の唇は、さっきよりちょっと冷たかった。
恭と、大好きな恭と付き合った日。6月9日の出来事。