冷淡なキミの二番目彼女。


 「恭、私ここ行きたいっ!」

 そう言って指差すのは、お気に入りの雑貨屋さん。可愛くて、ふわふわしていて、なんか好き。


 「…。」


 「恭ー?」

 私のことを見ないのなんてしょっちゅうだけど、無視なんて一度もしたことない。


 恭に視線を向けると、何か考えごとでもしているような顔をしていて、私の声なんて全く届いていないようだった。

 「恭?恭くーん?恭ちゃーん?」

 “恭ちゃん”と、呼んだ瞬間。驚いているかように恭の目が見開く。ーーもちろん私は訳が分からない。


 「…綾、音?」

 そう言って、焦った表情で私の方をバッと見てーーまたいつもの無表情に戻る。


 「あぁ、行きたいとこ決まったの?」

 何も聞くな、話すな、って言われているような気がした。どちらにせよ地雷を踏む気は無いのだけれど、やっぱり気になってしまう。


 「ここの雑貨屋さん行きたい。」

 そう言うと、恭は少し驚いたような顔をして。


 「女って、どいつもこいつも同じとこ行きたがるんだな。」

 なんて、すごくすごく切なそうな顔をして言う。


 恭とデートしているのは私。隣を歩いているのも私なのに、恭はきっと私のことなんか頭に無いんだ。


 付き合う前から分かっていたことだけど、覚悟していたことだけど。胸の奥がやっぱりちょっと痛くなった。


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