ひとつ屋根の狼さん。
第1話「お嫁に行けません!」
「きゃ……!
ちょ、ちょっと、離して……っ」
「離さない」
手首を強引に捕まれて、とらわれる。
懸命に逃げようとするけど、びくともしない拘束の手。
あとほんの数センチで、わたしと彼のくちびるはくっついてしまうにちがいない。
それくらいの近さで、切れ長の瞳に獰猛な熱をたたえてわたしを見つめるひと。
……わたし、このままじゃ、
食される!??(泣)
「あの、落ち着いてくださいっ?
わたしなんかじゃ、相手にもなりませんし、ねっ!
ほら、わたし、ちっぱいですよっ?」
ふるえながらも早口でまくし立てる。
鼻の頭に、ふ、と息づかいを感じた。
……笑ってる。
不覚にも、はじめてみたその笑顔に見とれていると、
「しらねーの?
俺は変態なんだよ」
……え?
その意味を理解する前に、もうすぐそばまで瞳を閉じた綺麗な顔が近づいていて―――。