僕と私とそれから空
第一章

簡単に言わないで

(あれ?っていうか…)

「私の名前、なんで知って……」

私は、彼と同じクラスになったのは初めてのはず。
しかも、クラス替えしてからまだ1ヶ月ちょっとしかたっていない。

今月に入って授業をサボり続けている私の存在をなぜ知っているのだろう?

それに私は、只でさえ存在が薄いというのに。

「え!?あー…いや、その…あぁ、そうそう!よくサボってるなー!って思ったんだ!!」

「そう、ですか…」

(私のことを気にかけるなんて、変わってる人。)


それが、私が彼に対する第一印象。

「明日葉さんこそ、なんで俺のこと知ってんのー?」

「いつも、賑やかだから…」

そう、いつだって彼は騒ぎの中心だった。
だから私も知っている。

「そっかー。それにしても、今日は天気いーな」

「そうですね。風も気持ちいいですし」

「……明日葉さんはさ、なんでいつも屋上に来てるの?」

「え…」

いきなりの質問に戸惑う。

「な、なんとなくです。」

「なんとなくでいつも屋上にくるのか。変なの!」

プハッと吹き出したように笑い出す彼。
しかし、その笑いに馬鹿にしたような感じはしなかった。

「俺はね、空が好きなんだ。だから、たまーに屋上に来てはこうやって空を見上げる。そうするとさ、悩んでたこととかぜーんぶ、どうでもよくなっちゃうんだよね。」

ハハハ、と少し自虐めいて彼は笑った。

キーンコーンカーンコーン

始業時と同様の音が鳴り響いて終業を報せる。

「あ、終わった。さーてと。俺は帰ろうかな!明日葉さんも帰らない?」

「い、いえ、私は、もう少しここにいます。」

「うわー、不良だー!なんてね!じゃあ、またね!」

ガチャン

ハハハっと軽快に笑うと、私にまたねと手を振り去っていった。

終始、彼は笑っていた。

(…やっぱり変な人。)

私は、その場に寝ころび、空を見上げた。

遠くで、始業のチャイムが聞こえた。
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