僕と私とそれから空
次の日、私はいつも通り屋上へと向かう。

ガチャン

相変わらずの扉を開いて、足を踏み入れる。

今日も、天気がいい。

「早く、卒業したい…」

「なんで??」


「!?」

ぽつりと独り言を漏らしたつもりなのに、なぜか返事が返ってくる。

私は、驚いて声のした方をみた。

そこには、昨日初めて話した駒瀬 創馬くんがいた。

「こ、駒瀬くん!?」

「おはよう、明日葉さん!」

「お、おはようございます…」

にこやかに挨拶をする彼と違って、私は即座に彼と距離をとった。

「あ!避けた!」

「ご、ごめんなさい。」

「俺、嫌われてる!?」

「い、いえっ!違うんです!私、その…人間恐」

途中まで言いかけて、ハッとして言うのをやめた。

「…?明日葉さん?」

「なんでもありません。それより、なんで駒瀬くんが居るんですか?」

「居ちゃだめだった?」

「いえ……別に…」

(本当は、誰とも関わらずにゆっくりとしていたいけど、そんなこといえないし………)

「じゃあ、俺は戻ろうかな!」

「え?」

(サボりに来たんじゃないの?)

「明日葉さんの顔見たかっただけだし、じゃあね!」

ガチャン

「…………私の、顔?」

その日から、朝と昼と帰り。
駒瀬くんは必ず屋上へやってきた。

私も、なぜだかよく分からない安心感が生まれてきて、彼とは話すことが出来た。

久し振りだ。

人と会話をするのは。

人と交わるということは、こんなにも楽しかっただろうか?

「明日葉さん!」

「あ、駒瀬くん。おはよう。」

「おはよー!」

今日もまた、彼はやってきた。

そして、挨拶を交わす。

すると、彼はいきなりまじめな顔つきなって、言った。

「…ねぇ、明日葉さん。俺、聞きたいことあるんだけど良いかな?」

「え?、うん。なに?」

「明日葉さんってさ、なんで、いつも屋上(ここ)にいるの?」

ピシッと、ガラスにひびが入るようなおとが聞こえた気がした。

「な、んでって…?」

震える声を抑えて、絞り出すように返す。

「うん…ずっと聞きたかったんだけど、なにか事情がありそうだから明日葉さんが話してくれるまで待とうと思ってたんだ。けど、やっぱり気になるんだ。理由を教えてくれないかな?」

真剣な眼差しで問いかけてくる。

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