落雁
うー、めんどくさい。いきなり起き上がったから、血がのぼったのだろうか。いや、知らないけど。
ただ突起物が掠めただけで血が出る人間の脆い体に呆れてしまう。まぁ、自分の体なんだけど。
よくよく見ると、制服のままじゃないか。皺になっちゃった。
仕方無いから明日は予備の制服を出すか。
そう考えながら、あたしは台所に立つ。
何作ろうかな。冷蔵庫の中身を物色する。
今日は割りと家に居る男達が少ない。
みんな出ているんだろうなぁ。
そんな事を考えながら、冷蔵庫の中から林檎を出す。
そう言えば今朝、親戚に貰った林檎を夜に食べようと思って冷やしていたんだった。
すり下ろして食べようっと。そんなに熱量も無いだろうし。
台所の棚に仕舞っているすり下ろし器を手に取った。
「弥刀ちゃん」
後ろから声がする。
振り向くと、学ラン姿の司が立っていた。
「今日、どうしたの?」
「あぁそうか、学校にはあたしは無断欠席になっているのか…」
「いや、そうじゃなくて。僕も今日は学校行ってないよ」
「え、おい」
制服の腕を捲った。
は、と気付く。
顎から血が滴っている。
「わっ、やば!!!」
制服についちゃったかもしれない。
慌ててタオルを手に取って、顔に当てる。
「うわー、付いちゃったよー」
制服は黒いから目立たないけど、良く見ると赤が染み込んでいる。