落雁

「それ、食べるの?」

司の視線はあたしが手に持っている林檎に向けられていた。

「うん。林檎すきなんだよね、喉潤うし」
「そう言えば僕にも食べさせてたよね」
「あたしの果物チョイスは全て林檎になるからな!!」

ふふ、と司は笑った。

「それ、すり下ろしてあげようか」
「え、ほんとー??うわ、超らくー。助かるわ、ありがとー」

あたしはそのまま林檎を司に手渡した。

「遠慮とかは無いんだね」
「ある訳なかろう!!」

あたしはそのまま机に突っ伏した。
うーん、だるいなぁ。体が重い。

「体きついの?」
「きついっていうか…うーん。肩痛い」
「そうだろうね」

司は笑う。
こいつは、一部始終見ていたんだろうか。
まぁ、この口振りからしてそうなんだろう。

「弥刀ちゃん、林檎好きなんだぁ」
「普通にすき」
「へー」
「いや、興味ないなら聞くなよな」

うーん。お腹が空いた。
台所に響く、林檎のすりおろされる音が心地よくて、つい目を閉じてしまった。



「…ねぇ、弥刀ちゃん?」

とんとん、と頭を突かれる。
慌てて目を開けた。

司が、あたしを覗き込んでいる。
いつの間にか、寝ちゃったんだ。


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