落雁



□ □ □



翌日学校に行くと、司じゃなくてあたしがみんなに囲まれた。
どうやら、昨日警察が学校に連絡をしたらしい。

どこから情報が漏れたのか、学校中にあたしの“武勇伝”は広がってしまった。

「京極ぅ、やっぱりお前は男だったのか」
「よっ!!イケメン」

剣道部のむさ苦しい奴らに頭をぐしゃぐしゃされる。

さっきはごっつにされた。
いい加減、いちいち髪を直すのも面倒になってくる。

「ああああーうざい!なんだイケメンって」
「まじよー、お前の筋肉は女のものじゃないって信じてた俺スゴイ」
「おい」
「回し飛び蹴りだろ?かっこいいなー」
「尾ひれついてるよそれ」

さっきは空中三回転回し飛び蹴りとか、アイアンクローで決めた、だとか適当な事を言い付けられたりした。
人の口には戸が立たぬとはよく言ったものだ。


「弥刀ちゃん」

剣道部の奴らから解放されて、後ろから声を掛けられた。
振り向くと、女子の目を引く司くんだった。

学校ではなるべく会わないように、関わらないようにしているが、時折喋るとどうしても関係を聞かれてしまう。情報に疎い女子は面倒。

「今日、部活行くんでしょ?僕も行くから」
「ボクシング部?珍しいね」
「気分屋だから」

笑顔で、あたしの横を通り過ぎていく司。
司の甘い匂いが鼻を擽る。


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