落雁

がしりと腰をつかまれて、そのまま司も立ち上がる。
思わず悲鳴が出た。

肩に腹を乗せられた状態になって、司の身長の高さで、床が見える。
今にもその高さから落とされそうで怖かった。


空いている膝で、司の鳩尾を蹴る。

落とされるようにあたしを離して、司はよろめく。

あたしは一歩下がって、司に足を振り上げた。
が、その足をつかまれてしまい、逆にバランスを崩して、司に吊られているような状態となった。
しまった。何もできない。

「うわああああああああああ!!!」

司があたしを振り回す。

つまり、足だけをつかまれて、体は宙に浮いている状態だ。

色んな器具に当たってしまいそうで、怖い。

数回振り回されたところで、あたしは解放された。

立ち上がったけど、目が回ってふらふらしている。
そんなあたしを見て、司は笑った。


「これで、終わりにしよっか」


司は笑顔のまま。

言葉も聞かないで、あたしの胸倉を掴んで殴った。

「っ…」


今まで、1番重い拳だった。


脳味噌が揺れて、何も考えられなくなる。

頭が、真っ白になる。

自分で立てなくなっているみたいで、司の手があたしを支えてくれていた。

そんなことも分からなくなるくらい、頭が揺れていた。


ふふ、と司が笑った。
声を押し殺して笑っているみたいだった。
司にもたれているから、笑っている振動が直接脳にくる。
気持ち悪くなった。


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