落雁
「…なんでわらってんの」
やっと声が出るようになった。
まだ頭がずきずきする。
「面白くて…」
まだ機能しないあたしの頭を、司は自分の膝に乗せる。
ぼんやりとした。司の顔が、よく見えない。
「こんなにぼろぼろだから、部長にばれちゃうなって」
視界がはっきりしてきた。相変わらずピンクっぽいけど。
司の口元が切れている。
紫色だったり、血が出ていたり。
きっと、あたしはもっと酷いんだろう。
一気に感情が押し寄せてきた。
負けた、というどうしようもない敗北感と、どうしたらいいか分からない焦燥感。
「え、ちょ、待って。なんで泣いてんの」
見下ろしている司が慌て始めた。
熱いものが目から流れてくる。どうしていいかわかんないのはあたしのほうだ。
「うぅ…、あ」
目を隠して、声を押し殺す。
こんな奴に弱いところを見せてしまうなんて、あたしは当主を目指す資格もないかもしれない。
「つかさにまけた…」
そう呟くと、今度は司が爆笑した。
「ぷっ、なにその理由…!あはははは、おもしろーい」
「なにわらってんのよ!!」
あまりにも笑うので、あたしは司の顔を緩く殴った。