落雁
「正直に言ってよ。どこが痛いの?」
問いただすような視線に、逃げられなくなったような気がした。
強がっていたような感じになってしまう。かなり恥ずかしい。
しかし、今言わないとあたしはこのままだ。
「…わき腹」
「あの時打ったところ?」
「そう」
はぁ、と司は溜め息をつく。
「そういえば、絶対安静だったっけ。この間僕と殴り合いした時も痛がってもんね」
「最初のほうは痛くなかったんだけど…。少しずつ痛みが増していたから、限度が分からなかった」
「…仕方無いなぁ、甚三を呼ぶから、少しの間寝てたら?」
寝る?
ここで?完全な板の間で?
「ベッドに運ぶから、少しの間我慢してよ」
「は?!無理無理、動けない!!いいいいいいいいいいいいいいい痛い痛い痛い!!!!!!」
司があたしを横抱きにした。
かろうじで右わき腹を避けてくれている格好にはなっているけど、曲げられる体が痛くてしょうがない。
「痛い痛い!!まじで、死ぬ、揺らすな!!」
「そんなんで死ぬわけないって。ほら、あと少し。…介護してるみたい」
「てめぇ今なんて…、いだだだだだだだ」
暗がりの寝室に入って、ベッドの上に下ろされた。
横になると、重力が小さいせいか痛みが少し和らいだ。
「…ひどいみたいだね。少し寝てなよ」
「…いまなんじ?」
「1,2時かな。多分。甚三の番号は?」
仕方なく、覚えている甚三の番号を司に伝えると、そいつはそのまま消えてしまった。
「…はぁ」
大変恥ずかしい。
手当てされて、動けないから運んでもらうなんて。どんだけ甘えているんだ、あたしは。
ベッドから司の甘い匂いがする。
ここで寝るのは2回目だな。我ながらすごいことをしていると思う。
早く、家に帰って父さんに直訴しないと。
それよりも、父さんや皆の意思を知りたい。何を思って、あたしじゃなく司なんだ、と。
そんなことを考えながら、まぶたを閉じた。