落雁
■第三章
真実
□ □ □
目を開く。
まず1番最初に飛び込んできたのは、真っ白な天井だった。
目玉だけを動かして、周りを見渡した。
窓が視界に入る。外はもう、真っ暗だった。
右に視線を動かすと、椅子やら扉やらがある。
体を起こした。
途端にどこからか痛みが走った。
「ぐおおおおお…」
再び体がベッドに沈んだ。
勘でわかる。
自分の部屋でもない、司の家でもない、つまりここは病院だ。
明らか過ぎる白の多さですぐに分かった。
壁に掛けられていた時計を見ると、午前1時。
嘘、もうこんな時間なのか。
どれだけ寝てたんだ。
思わず溜め息をつきそうになると、その瞬間に真っ白な引き戸が開いた。
「うわっ!!」
「うおっ」
入ってきたのは父さんだった。
部屋着じゃなくて、外行きの着物を着ている。
「なんだよー、起きてたのか。看護士さんと話が違う。まじびびった」
「来てそうそうそれかよ。実の父親だってのに」
「いやー、だってさー、目ぇ開いてんだもんびびるよ」
どしどし歩きながら、ベッドのすぐ横に置いてある椅子に座る父さん。
「ここ病院?」
「正解」
「あたしずっと寝てたの?」
「みたいだなぁ。お前ほんと俺の娘だわ」
いつもみたいに笑う父さんを見て、少しほっとした。
「ヒビ入ってたんだってな」
「は?!まじで」
「肋骨数本ヒビくらいだってよ!おてんば娘さんめ!」
ヒビ入ってたのか…。
確かに痛すぎたんだよなぁ。まさか、そこまで悪くなっていたとは。
そして、沈黙の時間が流れた。
どちらも口を開こうとしない。
この狭い病室にたった2人なのに、どちらも喋り始めない。
なら、あたしが切り出す。
「…何で黙ってたんだよ」
あたしは、このアホ親父が言い出せないことを、率直に聞いた。
「何を??」
「司のことだよ」
そう言うと、父さんは苦笑した。
「うーん、どこから話そうかねぇ」
顎に手をやって、父さんは口を開いた。
「俺が初めて司に会ったのは、2年前だったかな」
「2年前?!」
父さんは頷く。
「弥刀は知らないと思うが、あいつはお前の2つ年上、18だ」
「18歳?!ちょっと待って、司もあたしと一緒に高1やってるよね」
「あいつは16の時に退学してんだよ。いい機会だと思って、無理矢理お前の高校に入学させたんだ」
あたしは体をゆっくり起こして、壁に凭れた。