落雁
車には勝てない
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本日は日曜日。
珍しく家族3人揃っての昼食だ。
遅起きである2人にとってはこれが朝食だが。
「あら、顔の傷は綺麗になったのね」
母さんは起きがけのぼんやりとした顔をあたしに突き合わせる。
まじまじとあたしの顔を見ては、妖艶に笑った。
「おめぇは治りが早いなぁ」
「あなたに似て頑丈」
豪快に笑う父辰巳と母賀奈子。いつも2人で仲が宜しいことだ。
あたしは自作の味噌汁を啜った。
最近ようやく物が美味しく食べられるようになった。
怪我が絶えないで口の中が鉄鉄してたのがずっとだったもんだから、最近の食事は以前よりもずっと楽しい。
右脇腹の怪我も大分回復した。
「あ、そうだ弥刀」
「ん」
鯖を橋で解す母さんが顔を上げた。
「司とはなにか進歩あったの」
ガチャーン。
鯖に手をかけようとしていた父の箸が落ちる。
「まあ、ちょっとなに」
母さんは父さんを茶化すように、にやりと笑った。
そんな母さんを怪訝な目で見て父は口を開く。
「弥刀、司とどうなんだ」
危なくも味噌汁が息道に入りそうになった。
「なに? いきなり…」
「み〜と〜、アタシには誤魔化さなくても分かるのよぉ〜〜」
まさに女狐のような笑みだ。
「べつにどうだって言われても、どうにも…」
「京極の当主は別で探す」
「ぶっふぁ」
完全に息道に入った。味噌汁in息道。
咳が止まらない。
ゼイゼイ言いながら父を見上げた。