落雁
告げられること
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翌朝、あたしは起きることができなかった。
昨日の柔道部プラスダンベルが効いたのか、まったく体が動かなかった。
というのも半分、あたしは朝起きてすぐに体の変化が分かった。
これは…風邪を引いたな。
「お嬢、おはようございます」
毎朝のように甚三の声が襖の向こう側からする。
うーん。体が重くて動けない。
あたしは布団を口元まで引っ張って、甚三を呼んだ。
「じんざぁー、はいって…」
「いいんですか?」
「風邪引いたかも」
静かに襖は開かれた。
今日も今日とて凶悪犯な彼の顔は健在だ。
顔に似合わない心配そうな目であたしを見ていた。
「お嬢、大丈夫ですか。学校は休みでいいですよね」
甚三の手を掴む。
予想通り冷たくて、体が熱いあたしには丁度いいくらいだった。
「甚三の手、冷たくて気持ちいいー」
「熱あるんじゃないですか」
無骨で傷だらけな手に頬擦りする。
手だけでも凶悪そうだが、その手は美味しい料理を作ること、優しいことをあたしは知っている。