落雁



□ □ □



脇腹に痛みが走り、目が覚めた。

「…」

開けづらい目を開けて、その痛みの元を見遣る。
部屋は随分暗い。天井に小さなライトが数個ある程度だ。

「起きたか」

知らない男の声である。
こいつの足があたしの体を動かしたようだ。
だんだん目がなれてきて、周りの様子が分かるようになる。

床が冷たい。よく見るとアスファルトの上に寝ている。奥の方に黒いテーブルが置いてあった。
すぐに分かった。最初に連れていかれた部屋じゃない。

「いって!!!」

ごつりと胴を蹴られる。そいつは靴を履いたままだ。

「…なにすんだよ」

頭を上げ、腕に力を入れて起き上がろうとした。

途端に、電気が走ったような痛みが体に走る。
原因は左足だった。動かない。
轢かれたすぐは全身が痛かったのに、今は的確に痛いところが分かった。

経験したことは無いけど、これは本能で察した。骨折というやつだ。

< 241 / 259 >

この作品をシェア

pagetop